カンタン解説|美容クリニックのリピーター顧客獲得・リピート率向上のための戦略について
リピーターが少ないなど、自由診療の美容皮膚クリニックの集客にお困りではないでしょうか?
インターネットによる情報収集が増えたことによりクリニックの集客方法も多様化し、何に力を入れるべきかがわからないというお声をよく聞くようになりました。今回は、前回の「新規患者の集客方法」に続き、「リピート戦略」についてご紹介します。
また、広告費が高いという悩みもよく聞きます。
では、単純に広告費を削減したらいいのでは?と思うかもしれません。
しかし、広告費を定めているのはGoogleなどの大手企業だったり、業界での一定の相場があるため、簡単に広告費額面を下げることも難しいでしょう。今回は、広告費そのものの額面上の額を下げることができなくとも、広告費から生み出される売り上げを最大化する方法、すなわち広告費効率を最大化する方法についてもあわせて解説していきます。
リピート戦略とは?
そもそも、どのように来院数を増やす戦略(集客戦略)は立てられるのでしょうか。
まず、クリニックにおける「集客」には、新規患者の来院と既存患者の再来院という二つの側面があります。これら二つに対してそれぞれ戦略を練ることが有効です。その中で広告費効率を最大化する上で最も重要となるのが「リピート戦略」です。
前回、新規患者の集客戦略には、二つの主要な要素があります。一つは「情報まで辿り着いてもらう」こと、そしてもう一つは「情報から予約をしてもらう」ことが重要とご説明しました。
今回のリピーター獲得にも、二つの主要な要素があります。「来院した患者の母集団を作る」ことと、「その母集団へ働きかける」ことです。
例えば、いくら良いキャンペーンを考えたところで、それを伝える先がなければ意味はありません。また、伝える先をたくさん作ったとしても、何もせずにいてはその人たちがまた来院してくれる可能性は低くなります。母集団形成とキャンペーンの発信は不可分な戦略です。
本記事では、具体的な方法を3つご紹介します。
LINE公式アカウントへの友達登録
LINE公式アカウントの設立は、クリニック経営における基本的な戦略の一つです。ビジネス用のアカウントには「LINE for Business」と呼ばれるLINEアカウントの作成が必須です。患者が初訪問した際に、LINEへの友達登録を促すことにより、その後のキャンペーン情報等を効果的に提供できます。
この戦略がない場合、顧客へのアウトリーチ方法は電話など、ハードルが高い手段に限定され、リアルタイムでのキャンペーン情報の提供は難しいでしょう。また、患者の多くは「浮動層」であり、クリニックからの具体的なアプローチがないと他のクリニックへ乗り換えやすい傾向があります。
クリニックで提供する体験価値が一定以上ある場合、キャンペーン情報の配信は患者の再訪を促す可能性が高まります。大きなコストを払って新規患者を集客した場合、その患者が再来院することで広告コストは来院回数で割り崩され、全体のコストは大幅に削減されます。しかし、一度きりの来院で終わると、広告コストは一回あたりの売上に全額負担し、利益率が下がる可能性があります。
従って、新規患者の数だけでなく、「リピートした患者の数」や「リピート率」に注目することが重要です。これは、開業医だけでなく、現場スタッフも理解しておくべき事柄です。
LINEの友達登録は、「登録の促進」および「運用の維持」の二つのハードルがあります。特に登録の促進には、現場スタッフへの周知が重要です。一方、運用の維持については、常識的な範囲でマーケティングキャンペーン(利益率を考慮したもの)を設計し、患者へ発信するだけで良いです。その内容は、現場スタッフや看護師などが主体的に考えることが可能です。
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回数券制度の導入
さまざまなBtoCサービス業において、顧客は3回連続して訪問するとその後も定着すると言われています。この傾向を踏まえて、3回以上の回数券をお得に患者に提供することで、回数券有効中のリピートを絶対のものとし、回数券が終わった後も定着させるという戦略になります。また、この回数券制度は先払いとなるためクリニックのキャッシュフロー改善にも役に立ちます。
一方で、先払いということは患者が2回目以降の治療や施術を受けた際は回数券がある間はキャッシュインが起こらないため、それを理解しておかないと見た目上1ヶ月目の売り上げが非常に高く、2ヶ月目(2回目施術)以降の売り上げが激減したように見えてしまいます。これは、実際に売り上げた(キャッシュインした)時の売上として全額を計上するのではなく、キャッシュイン時は前受金という枠組みで処理して、実際に治療や施術を受けた際に売上として会計計上することで、見た目上の違和感を解消できます。詳しくは税理士・経理専門家などに相談してみると良いでしょう。
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また、回数券は通常料金よりも安くすることが期待されますが、この際には利益率を考慮の上、経営を圧迫するような値引きはしないように価格戦略も検討する必要があります。
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顧客ロイヤルティプログラムの導入
顧客ロイヤルティプログラムは、顧客のリピート来院を奨励し、クリニックへの忠誠心を醸成するための有力な戦略です。その形態は多岐にわたり、ポイント制度、会員特典、バースデー割引、VIPプログラムなどは一般的にも様々なプログラムが使われているでしょう。その中でもいかに競合のクリニックより質のよいロイヤルティプログラムを設計できるかで、既存患者の再来院の獲得や、他クリニックからの乗り換えを獲得できる可能性が高まります。
ポイント制度
ポイント制度は、顧客が利用するたびにポイントが付与され、一定数に達すると特定のサービスや商品に交換できる制度です。例えば、「1,000円の診療費ごとに1ポイント」や、「5回来院するごとに無料のスキンケア商品をプレゼント」といった形が考えられます。このような制度は、顧客にリピート来院の動機づけを与え、長期的な関係性を築くのに役立ちます。
会員特典
会員特典は、定期的なサービス利用を奨励するための手段で、例えば「毎月の会員料金で定額の診療やスキンケア商品が得られる」という形があります。このような制度は、顧客がクリニックとの長期的な契約を結ぶことを奨励し、安定した収入源を確保するのに役立ちます。
バースデー割引
顧客の誕生月に特別な割引やプレゼントを提供することで、顧客の喜びと感謝を引き出すと同時に、クリニックへの再訪問を促すことができます。
VIPプログラム
長期的な利用者や高額のサービスを頻繁に利用する顧客に対して、優先的な予約、特別な割引、専用の待合室などのVIP特典を提供することで、彼らのロイヤルティを深めることができます。
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リピート顧客獲得に向けた考察
新規開業をご支援させていただいた際、さまざまな形での広告費の運用を経験しました。その中で分かったこととして「リピート戦略は可視化しづらいからこそ軽視されがち」であり、一方で「リピート戦略をきちんとやっているクリニックは成功している」ことです。
美容皮膚科領域では、新規顧客一人を獲得するためには数千円〜数万円のコストが必要と考えられます。しかし、集客コストを最小限に抑えようとするのではなく、新規顧客一人あたりから見込める売上とそのコスト(薬剤原価、人件費など)を考慮に入れたうえで、投資効果を評価することが重要です。
新規顧客がリピートする確率や、顧客一人あたりがどのくらいの金額をクリニックに投じてくれるかといった情報を考慮したLTV(Life Time Value)という指標も重要です。初期集客のコストとLTVがバランスよく取れていれば、集客コストが高くても積極的に投資を行うべきです。
例えば、クリニックAでは当「美容メディアPeau」に月10万円を支払い取材記事を書いてもらったところ、月に10人程度の新規顧客が安定して集まるようになりました。この10人の顧客は1回来るごとに平均5万円を使ってくれるため、月50万円の売上が見込まれます。施術の原価が30%であれば、月35万円の粗利が得られ、広告費を引いた後でも15万円の投資効果が得られます。
また、こうして来院した顧客の10%が10回リピートしてくれると仮定した場合、毎月10人の新規顧客のうち1人が常連となります。つまり、1人当たりの価値を考慮すると、LTVは5.5万円となり、広告投資から見込まれる売上は月55万円となります。
このように、広告の投資に対する効果を最も高く引き出すためには、LTVを高められるリピート戦略が不可欠なのです。
私たちの事業経験から、きっちりとリピート戦略を行うことができれば、数人の患者を同時に対応できる小規模なクリニック(東京)であれば、月40万円程度(Googleリスティング25万円、キュレーション15万円)の投資で優良な黒字経営が構築可能だと考えています。ただし、地域によってはコストが異なるため、これはあくまで一例としてご理解ください。
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記事執筆者:Peau編集部
2021年に創業した医療コンサルティング会社のメディア運営チームであるPeau編集部。
クリニック開業支援やメディカルヘルス領域のコンサルティング業務に長年従事してきたメンバーで結成されたライティングチームのため、ユーザー目線と事業目線の両視点からの理解によりメリット・デメリットを明確にする記事を執筆。特に自由診療の美容皮膚科領域に強みがある。
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