カンタン解説|新規開業クリニック向けのマーケティング戦略について

集客戦略の二つの柱の図

これから美容皮膚科クリニックの開業を考えている方。既に美容皮膚科を経営している方。
新規患者を集めることに難しさを感じていませんか?

情報技術の進化により、クリニックが自身の魅力を伝える機会が増えました。しかし、検索結果で上位に表示されず、ウェブサイトが見つけられない、あるいはウェブサイトへの訪問が来院に繋がらないといった問題に直面しているクリニックも少なくありません。では、どのように新規患者を集めるための戦略を立てていくべきでしょうか?

クリニックにおける「集客」には、新規患者の来院と既存患者の再来院という二つの側面があります。これら二つに対してそれぞれ戦略を練ることが有効です。今回の記事ではまず、「新規患者の集客方法」についてご紹介します。

新規患者獲得とは?

新規患者の集客戦略には、二つの主要な要素があります。一つは「情報まで辿り着いてもらう」こと、そしてもう一つは「情報から予約をしてもらう」ことです。この二つを組み合わせて行うことで、より効果的な集客が可能となります。

情報に関する図

例えば、たくさんの人々があなたの情報までたどり着くことができたとしても、その中から実際に予約を行う人の割合が非常に低ければ、それだけで予約が増えるとは限りません。逆に、たくさんの人々があなたの情報を見て予約を行う可能性があるとしても、それを見る人が少なければ、安定した予約数は期待できません。
そこで、情報へのアクセスと予約の両方を兼ね備えた集客戦略をご紹介します。

集客戦略

キュレーションサイト/ まとめサイト

キュレーションサイトとは、特定のテーマに特化した情報を整理して提供するウェブサイトのことを指します。具体的な例としては、当「美容メディアPeau」のように美容医療をテーマにした物が該当し、これらのサイトではテーマに沿った様々な情報記事が掲載されています。

長所 短所
  • 該当するテーマに興味のある人が記事を
    見ていることが多い
  • 記事にアクセスしている時点でユーザーが
    ふるいに
    かけられており、他の広告方法に
    対して効率的な集客に繋がる  
  • ニキビやダイエットなど広いテーマの場合、
    検索上位での記事を書いてもらいにくいため、
    治療名などで絞った方が効率的にユーザーに
    アクセスしてもらえる可能性が高い

次に、具体的な方法について比較してみましょう。
キュレーションサイトを使う場合の方法と、それぞれの長所・短所は以下の通りです。

推奨度 方法 長所 短所
アフィリエイトサイトと契約 多くのサイトに掲載される可能性 クオリティコントロールがしにくい
キュレーションサイト(まとめサイト)と直接契約 信頼性のあるサイトに掲載可能 個別に企業と契約交渉

連携方法

①キュレーションサイトへの登録して報酬を支払って掲載する

①は代理店に依頼する形となり、登録をしているクリニックについては、代理店に加盟している各サイトで自由に掲載されます。一般的に、報酬は成果報酬型で、美容業界では予約1件あたり約2万円程度の費用が発生します。

長所 短所
  • 数多くの記事に掲載される可能性
    がある  
  • 記事掲載の競争率が高く報酬条件が劣ると取り上げられにくい
  • 記事の信頼性が不確定で、品質管理が難しい
    ※医療広告ガイドライン(医療美容の記事を書く際に遵守する法的規制)を
    遵守していない記事に掲載されたり、誤った記述があった場合も、
    自身でその記事を見つけ出して訂正を要求するなど、管理が難い
  • 直接記事を書く人とコミュニケーションを取ることができないため、
    この手法はクオリティコントロールに自信がある場合以外には推奨しない
②Google検索上位に出る「まとめサイト」等に直接交渉する

この手法は自身でウェブサイトの記事を確認し、記事の質を判断して依頼ができます。また、検索上位に出てくるサイトは多くの訪問者がいる証拠でもあります。
直接記事を作成する企業と交渉が可能なため、クリニックの魅力をより効果的に伝えることが可能です。価格プランは企業によって異なりますが、PV(ページビュー)あたりに課金されるシステムが一般的で、PVあたりの費用は約100円程度で、テーマを絞ることで10万円程度の予算から始めることが可能です。

長所 短所
  • 信頼性の高いサイトへの掲載が可能
  • 内容のチェックが可能
  • Googleリスティングに費用を支払わずとも、
    検索上位にクリニック情報が表示され、
    多くの人に見てもらえる
  • (多くの場合)ページを見られたときに費用が
    発生する報酬形態であり、無駄な投資が最小限に
    抑えられる
  • 価格プランは企業ごとに異なり、交渉が必要
  • Google検索での掲載順位がどの程度になるかは
    不確定で、実際に掲載してみないと評価できない
    ※ただし、PV報酬(ページが閲覧された際のみ報酬)を
    用いることで、クリニック側が不利になることはない 

記事には、LINEなどの予約プラットフォームへのリンクを設けるだけでも良いですが、次に説明する記事LP(ランディングページ)をリンク先にすることも可能です。この辺りは、キュレーションサイトの運営会社と相談して、今までの傾向などを確認することをおすすめします。

運用シミュレーション

上記の方法は非常にコスト対効果が高いです。例えば、1PVあたり100円で月間1,000PVのサイトに掲載し、理想的な予約成功率(CV率)の3%が10万円の施術の予約を行った場合、次のような利益が見込めます。

サイトを見た人の数:1000人→コスト10万円
実際に来院した人の数:3%と仮定して30人
売上の金額:30人×10万円=300万円
投資効果:290万円

キュレーションサイトへの掲載は、複数のサイトで同時に行うことも可能です。多くのテーマで安価なサイトに依頼するよりも、特定のテーマ(例えば、クリニックが推奨する特定の治療法)に絞り、それに対して予算をしっかりと投入して集客する方が、最終的にクリニックの売上につながるでしょう。

まとめ
キュレーションサイトへの直接交渉は非常に有効な手段であり、我々が開業支援を行ったクリニックでも、最初の1ヶ月で新規患者の80%、その後も平均して新規患者の50%がまとめサイトを通じて予約を行いました。
例えば、当「美容メディアPeau」は、美容医療の高い掲載順位と品質を保持しているサイトで、医療専門のコンサルティング会社が運営しているため、個人運営のものより信頼性が高いです。

Google リスティング広告

Googleを検索すると、その上部に「スポンサー」と書かれたリンクが表示されるのを見たことがある人は多いはずです。
Googleリスティングとは、特定のキーワードに対して自分のウェブページを検索結果の上位に表示させる方法です。具体的には、Googleのアカウントを使用し、自身が設定した検索キーワードで検索された時、自分の指定したウェブサイトが上位に表示されるようにすることができます。

その際に、有料広告(Google Ads)を使用することもありますが、SEO対策として自然検索(無料の検索結果)でも上位に表示させることが可能です。

ウェブページを作る際には、具体的な治療名などで絞ったキーワードを中心に、そのキーワードについて詳しく説明する内容のものが好ましいです。例えば、「東京 ポテンツァ おすすめ」などが良いキーワードになります。また、そのウェブページはクリニックのホームページとは別に、専用のランディングページ(Landing Page、LPとも呼ばれます)として作ることをおすすめします(次のセクションで詳しく説明します)。

Google Adsでは、特定のキーワードでの広告表示位置を競ります。そのため、費用対効果を考えると、競争が激しい一般的なキーワードよりも、あまり競争のないニッチなキーワードを選ぶことが有効です。

長所 短所
  • 広告費用が発生するのは、ユーザーが広告
    を実際にクリックした場合のみであるため、
    成果報酬型の広告と言える
  • 広範なユーザー層に対して提供できるため、
    適切な予算設定により一定のクリック数を
    安定的に見込む
    ことが可能である
  • 人気のキーワードについてはクリック単価が
    高く、例えば15万円の予算では大きな効果を
    期待することは難しい場合がある 
  • ITに詳しくない人が自分で広告を運用することは難しく
    さらにその効果も限定的な場合が多い。よって、
    専門の広告運用会社に依頼することが推奨される
    ※ただし、運用を専門会社に依頼する場合、
    その手数料は運用額の約15%程度となることが一般的

Google リスティング広告にかかる費用

クリックあたりの費用は、キーワード毎にシステムによって自動的に設定されます。
この費用はシステムによって随時調整されるため、運用者は「1日あたりの最大費用」という形で予算を設定します。

一般的に、競争率の高いキーワードの場合、意味のあるレベルでの集客を実現するためには、1日の運用予算の下限はおおよそ5000円程度、また月間の運用予算はおおむね15万円以上と考えられます。
本格的にリスティング広告を運用している企業では、月間数百万円の運用予算を設定するケースも珍しくありません。

記事LP

LPは、ウェブページを見た人がそのページで行動(予約など)を起こすよう設計されたウェブページのことを指します。このLP作成には、マーケティングのプロに依頼することも可能ですが、自分で作成することも可能です。必要なのは、その治療についての詳しい説明、それを行うクリニックの特徴と魅力、そして訪問者が予約をしやすいようにすることです。そのためには、予約フォームや予約ボタンを目立つ位置に配置し、予約を促すことが重要です。

一方、SEO対策は一定の専門知識を必要とします。特に、Googleの検索アルゴリズムは頻繁に変わるため、それに対応した対策が必要となります。また、SEO対策の結果が出るまでには時間がかかることもあります。
よって、初期の集客手段としては、キュレーションサイトにリンクをおいてもらったり、有料のGoogle Adsを併用することをおすすめします。

長所 短所
  • 特定の治療に焦点を当てて作成するため、
    一般的なウェブページと比べて予約獲得の
    可能性が大幅に高まる
  • 記事LPは閲覧者の約3%に予約を促せる内容を
    目指して作られる
    (通常のウェブページでは1%以下の予約率が多い)
  • 大規模なウェブページを作るよりは、
    はるかに低コストで作成可能
  • 既にウェブページを持っている場合でも、
    新たに作成しなければならない
  • サービスごとに作成する方が効果的なため、
    複数のサービスを提供している場合はそれぞれの
    サービスについてLPを作成しなければならない

記事LP作成にかかる費用

ホームページを作れる人であれば自分で作成ができますが、「予約されやすいページ」を作るにはノウハウが必要なので、マーケティング支援をしている会社に相談するのが良いでしょう。その場合は、記事LP単体で頼むか、他のマーケティング支援と一緒に頼むかで値段が変わってくる場合が多くなります。

企業により価格差があるが、だいたい15万円程度〜の費用を想定しましょう。小規模な企業に頼む場合、もう少し安くなることもあります。作り込んだLPになればなるほど、価格は数十万、動画なども一緒に作る場合100万を超えることも十分にあることにはご注意ください。

まとめ
Google リスティング広告や記事LP作成も、新規の患者を集めるための非常に効果的な手段です。
ただし、これらの戦略は一度行ったからと言ってすぐに結果が出るものではなく、継続的なメンテナンスや改善が求められます。一方で、正しく運用されれば、非常に高いROI (Return on Investment) を達成することができます。

この方法が自分のクリニックあっているか、採算が取れているかの振り返りを3ヶ月に1回行い、評価した上で、継続するかどうかを判断するのをおすすめします。

SNS広告とアイキャッチ画像

SNS広告はInstagram、Twitter、Facebook、Tiktokなどでのスポンサード広告の一形態です。手間とコストを最小限に抑えて始められるため、初めての方でも容易に取り組めます。自身のクリニックのアカウントを作成し、投稿に対して広告費を支払うことで広告を配信できます。配信費用は表示回数に応じて計算され、一般的に1表示あたり数百円が目安です。また、Googleリスティング広告と同様に、1日あたりの予算を設定することが可能です。

アイキャッチ画像とは、SNSの表示サイズに合った、サービスの特徴を伝えるビジュアルです。インスタグラムでの広告の場合、表示が最適化される画像サイズで、魅力的な情報を効果的に伝えるデザインが必要です。この画像は自作も可能ですが、専門家に依頼することで、質の高い成果を期待できます。

長所 短所
  • すぐに、簡単に実行に移せるプライベート
    での利用経験を活かせる  
  • 特定の施術に興味がある人だけでなく、
    興味がない人にも表示されるため、
    ページビュー(PV)に対する投資効果が低い

インフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングとは、特定の分野やジャンルで影響力のある人物(インフルエンサー)を通じて、商品やサービスを紹介し、そのブランドや企業の認知度を向上させる戦略です。美容医療クリニックの場合、美容や健康に関心のあるインフルエンサーと提携することで、その人物のフォロワーやファンに対してクリニックの魅力を効果的に伝えることが可能です。

広告戦略にインフルエンサーマーケティングを組み込むことで、広告の効果を最大化することが可能です。特定のインフルエンサーがあなたのクリニックやサービスを推奨すれば、その信頼性と影響力により、広告のリーチと効果が増大します

長所 短所
  • 広告よりも信頼性が高いインフルエンサー
    フォロワーに対する影響力を活用できる
  • ターゲットユーザーに直接的な
    アプローチ
    が可能  
  • 適切なインフルエンサーの選定が難しい
    場合がある
  • インフルエンサーによる発信内容の
    品質に依存する部分がある結果(集客)
    に時間がかかる可能性がある  

まとめ
SNS広告とアイキャッチ画像、インフルエンサーマーケティングの手法は、特にSNSが得意であるか、自身のアカウントのフォロワーが多い場合、または既にインフルエンサーとのつながりがある場合には有用な手段です。
一方で、そうでない場合にはキュレーションサイトへの掲載やgoogleリスティング広告と並行して、副次的な広告戦略として運用するのが良いでしょう。

新規顧客獲得に向けた考察

新規開業を支援した際、さまざまな広告費での運用を経験しました。その中で分かったこととして「予算と集客効果が必ずしも正比例しない」ということがあります。
ある一定の予算まで投資することで、集客効果は指数関数的に向上します。

予約する顧客の割合(=CV率)は統計データであり、ある程度の規模のターゲット層に対するアプローチがないと安定した結果は得られません。このため、中途半端な予算で集客活動を行うことは非効率的と言えます。反対に、ある程度の予算を設けて投資を行うことで、より良い結果を期待できます。

美容皮膚科領域では、新規顧客一人を獲得するためには数千円〜数万円のコストが必要です。しかし、集客コストを最小限に抑えようとするのではなく、新規顧客一人あたりから見込める売上とそのコスト(薬剤原価、人件費など)を考慮に入れたうえで、投資効果を評価することが重要です。また、新規顧客がリピートする確率や、顧客一人あたりがどのくらいの金額をクリニックに投じてくれるかといった情報を考慮したLTV(Life Time Value)という指標も重要です。初期集客のコストとLTVがバランスよく取れていれば、集客コストが高くても積極的に投資を行うべきです。

例えば、クリニックAでは当「美容メディアPeau」に月10万円を支払い取材記事を書いてもらったところ、月に10人の新規顧客が安定して集まるようになりました。この10人の顧客は1回来るごとに平均5万円を使ってくれるため、月50万円の売上が見込まれます。施術の原価が30%であれば、月35万円の粗利が得られ、広告費を引いた後でも15万円の投資効果が得られます。
また、こうして来院した顧客の10%が10回リピートしてくれると仮定した場合、毎月10人の新規顧客のうち1人が常連となります。つまり、1人当たりの価値を考慮すると、LTVは5.5万円となり、広告投資から見込まれる売上は月55万円となります。このように、新規集客活動の成果は集客コストだけでなく、LTVも考慮することでより明確に評価できます。

その上で、採算が取れる複数の広告手段があった場合の選択については、クリニックの方針や提供する施術により適した手段が変わるでしょう。
例えば、数多く新規来院者を増やしたい場合には大きな予算をGoogleリスティング広告に投資するのが良い一方で、より施術への興味が深い・自クリニックに興味を持ってくれた患者を集客したい場合にはキュレーションサイトで丁寧な取材記事を書いてもらうのが効率的です。

我々の経験から、数人の患者を同時に対応できる小規模なクリニック(東京)であれば、月40万円程度(Googleリスティング25万円、キュレーション15万円)の投資で効果的な集客戦略が構築可能だと考えています。ただし、地域によってはコストが異なるため、これはあくまで一例としてご理解ください。

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記事執筆者:Peau編集部
2021年に創業した医療コンサルティング会社のメディア運営チームであるPeau編集部。
クリニック開業支援やメディカルヘルス領域のコンサルティング業務に長年従事してきたメンバーで結成されたライティングチームのため、ユーザー目線と事業目線の両視点からの理解によりメリット・デメリットを明確にする記事を執筆。特に自由診療の美容皮膚科領域に強みがある。

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